先週から、新しい生活が始まりました。
大学院に通うことになったのです。大学院といっても通常の大学院とは異なり、社会人大学院なので、1週間のうち平日の夜2日と土曜の通学となります。

「大学院で何をするの?」「大学院を卒業するとどうなるの?」と、周りのひとからはよく聞かれます。修士課程なので卒業ではなく修了になるのですが、確かに僕みたいなWeb制作を生業としている者にとって、修士号が何の役に立つのか、疑問に思われても当然です。とりあえず現時点で役に立ったことは、ソフトがアカデミック版で購入できたことでしょうか。

僕は社会に出てから、ずっとWeb制作に関わる仕事をしてきました。最初は大学を卒業して入社した不動産会社のコーポレートサイトの管理・運営です。それから転職し、Web制作会社で6年弱ほど勤めました。そして今はフリーランスでWeb制作の仕事をしています。Web制作の仕事はおもしろいですし、僕みたいになんの専門分野も持たずに社会に出た者が、企業などの広報活動のひとつであるWebに関われることは貴重なことだと思いますし、魅力的なことだとも思います。

しかし、仕事をしながらずーーっと疑問だったことがあるんです。それは、僕たちが作ったモノは、はたしてどれほどの価値があるんだろうか、ということです。(「僕たち」というのは、Web制作に関わるすべての人たちという意味で。)
例えば、ひとつのショッピングサイトを作る際に、カートのカゴに入れるボタンの色は赤がいいのか、青がいいのか、文言は「カゴに入れる」?、「カートに入れる」?なのかで、デザイナーやディレクターは悩むわけです。ヘタすりゃ何時間も。例えが少し大げさですが、そうやって悩みに悩んで作り出したものと、勢いで短時間で作ったものの価値の差は、決して制作時間ではないはずです。

通常は価格は提供者(この場合は制作者)が決めます。価値は受領者(クライアントもしくはエンドユーザー)が決めます。 普通のことです。僕が見積もりを作るときも、この内容だったらこれくらいの時間で作れそうだな、ということで10日かかるからいくら、みたいな人日で計算します。でもクライアントさんにとっては、この理屈は根拠は理解できても最終的にピンとこないと思います。クライアントさんにとって重要なのは、その制作物がどれほどの付加価値をつけて利益を生み出すのか、という事だからです。ここに僕はずっと溝のようなものを感じてきました。

そんなことを言い出したら、世の中で取引されているすべてのモノやサービスに溝があるんじゃないかと言われてしまいそうです。確かにそうです。 ただ僕はやっぱり僕の仕事として、いちばん身近にあるものから解決していきたいと思うのです。

これからもWebに関わる仕事を続けていくために、「Webサイトが持つ価値とは一体何なのか」について、大学院で探してみたいと思います。